飲食店におすすめの助成金5選

飲食店では、人手不足、採用難、スタッフの定着率の低さ、最低賃金の上昇による人件費負担など、さまざまなお悩みが出やすいです。特に小規模の飲食店では、日々の営業だけでも忙しく、採用や教育、労務管理の整備まで後回しになりがちではないでしょうか。そのような中で、一定の要件を満たせば活用できる助成金は、採用・定着・賃上げ・両立支援を進めるうえで大きな助けになります。
この記事では、飲食店との相性が良い助成金として、次の5つをわかりやすくご紹介します。
※助成金制度は見直しが行われる場合があります。最新の支給要件や金額は、厚生労働省の公表資料をご確認ください。
飲食店で助成金を活用しやすい理由
飲食店は、助成金と相性がよい場面が多い業種です。
たとえば、
といった状況が起こりやすいためです。つまり飲食店では、雇用形態の見直し、賃上げ、定着支援、採用力強化に関する助成金を活用しやすい土台があります。
①キャリアアップ助成金(正社員化コース)
「長く働いてくれているアルバイトさんを正社員にしたい」そんな飲食店と特に相性がよいのが、キャリアアップ助成金の正社員化コースです。この助成金は、有期雇用労働者などを正規雇用労働者に転換した場合に支給対象となる制度です。
支給額
中小企業の場合
・有期雇用➡正社員:40万円(重点支援対象者の場合80万円)
・無期雇用➡正社員:20万円(重点支援対象者の場合40万円)
※重点支援対象者とは、雇入れから3年以上の有期雇用労働者や母子家庭の母等、一定要件に該当する方です
飲食店での活用例
・ホールのアルバイトとして長く働いているスタッフを正社員化する
・ベテランのパートリーダーを正社員にして、シフト管理や新人教育も任せる
・将来の店長候補として、中核人材を育てる
主な要件
就業規則に正社員転換制度を定めていることが必要となります。また、 対象となるアルバイトやパート従業員を実際に正社員にし、転換後は賃金アップが必要になります。 対象者や転換時期などにも条件があります。詳細を知りたい方は厚生労働省公式サイトをご確認ください➡
こんな飲食店におすすめ
②業務改善助成金
「最低賃金が上がるのは仕方ない。でも現場の負担も減らしたい」そんなときに検討しやすいのが、業務改善助成金です。この助成金は、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げたうえで、生産性向上に役立つ設備投資などを行った場合に、その費用の一部が助成される制度です。
支給額
設備投資の内容や賃金引上げ人数などに応じて異なりますが、上限額は30万円~600万円です。
助成率も区分によって異なるため、詳細は最新の公表資料をご確認ください。
飲食店での活用例
・POSレジを導入し、会計や在庫管理の効率を上げる
・モバイルオーダーを導入し、ホール業務の負担を減らす
・予約管理システムを導入し、電話対応や予約ミスを減らす
・厨房オペレーション改善のためにコンサルティングを受ける
主な要件
中小企業・小規模事業者であり、事業場内の最低賃金と地域別の最低賃金の差額が50円以内であることが必要です。 事業場内最低賃金を30円以上引き上げる計画と、生産性向上に役立つ設備投資等の計画を立てて申請します。 交付決定前に進めたものは対象外になるため、順序に注意が必要です。
詳細を知りたい方は厚生労働省公式サイトをご確認ください➡
こんな飲食店におすすめ
ポイント
最低賃金は毎年見直される可能性があります。そのため、最低賃金が上がってから慌てて対応するのではなく、あらかじめ助成金の活用も視野に入れて準備しておくのがおすすめです。
③両立支援等助成金
「出産や育児で辞めてしまうのがもったいない」「不妊治療や体調面に配慮しながら働ける職場にしたい」
「育休を取りやすくしたいけれど、現場を回す人の負担も心配」このような飲食店に検討しやすいのが、両立支援等助成金です。両立支援等助成金には複数のコースがありますが、飲食店では特に「育休を取りやすくする支援」「休んでいる間の現場を支える支援」「不妊治療や女性の健康課題と仕事の両立支援」が考えやすいです。
・育児休業等支援コース
・不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース
・育休中等業務代替支援コース
育児休業等支援コース
このコースは、従業員が育児休業を取りやすくし、職場復帰までスムーズにつなげるための取り組みを支援する制度です。
厚労省の支給要領では、育休取得前の面談やプラン作成、育休の取得、復帰後の継続就業などがポイントになっており、育休取得時30万円、職場復帰時30万円、さらに育児休業等に関する情報を公表すると2万円加算され、最大で62万円支給されます。
飲食店での活用例
・育休から無理なく復帰できるよう支援することで離職を防ぐ
・育休制度があることを社内外にわかりやすく示し、安心して働ける職場づくりにつなげる
主な要件
育休を取る従業員と面談をし、計画書の作成・届出を行ったり、育休から復帰した後、申請日までの間6か月以上働いてもらう等の要件があります。
詳細を知りたい方は厚生労働省公式サイトをご確認ください➡
育休中等業務代替支援コースとは
このコースは、育児休業取得者や短時間勤務者の業務を代わりに行う労働者に手当を支給、または代替要員を新規雇用(または派遣で受入)した場合に受給できる助成金です。
育休取得者の業務を代替する労働者に手当を支給した場合は最大140万円/人、短時間勤務者の業務代替では最大128万円/人、代替要員を新規雇用した場合は最大67.5万円/人支給されます。
飲食店での活用例
・社員が育休に入り、その間にホール責任者の業務を他のスタッフが分担する
・育児中のスタッフが短時間勤務に切り替え、その不足分を周囲のスタッフがカバーする
主な要件
業務を代替する労働者への手当制度等を就業規則等に規定することや、実際に手当を支給する必要があります。詳細を知りたい方は厚生労働省公式サイトをご確認ください➡
不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースとは
このコースは、不妊治療、月経、更年期など、女性の健康課題と仕事を両立しやすい職場環境づくりを支援する制度です。不妊治療、月経、更年期の各区分でそれぞれ30万円支給されます。
飲食店での活用例
・スタッフが相談しやすい体制を整え、離職防止につながる
・不妊治療の通院に対応できる休暇制度やシフト配慮を整え、働きやすい環境につながる
主な要件
休暇制度や時差出勤等の制度や賃金の取扱い等を就業規則等に規定し、実際に5回利用する必要があります。
詳細を知りたい方は厚生労働省公式サイトをご確認ください➡
④特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
「人手不足で採用の幅を広げたい」そのような飲食店に向いているのが、特定求職者雇用開発助成金です。この助成金は、高年齢者や母子家庭の母等、障害者など、就職困難者をハローワークの紹介で継続雇用する場合に支給される制度です。
支給額
中小企業の場合
・高年齢者、母子家庭の母等:60万円
・身体知的障がい者:120万円
・重度障がい者等:240万
※重度障がい者等とは、重度の身体知的障がい者、45歳以上の身体知的障がい者及び精神障がい者
飲食店での活用例
・60歳以上の方を採用し、仕込みや開店準備を担当してもらう
・母子家庭の母等をランチ帯の安定戦力として採用する
・障害特性に応じて、洗い場や軽作業などの仕事を切り出して雇用する
主な要件
対象となる求職者をハローワークの紹介により雇い入れることが必要です。 また、継続して雇用する労働者として採用する必要等があります。
詳細を知りたい方は厚生労働省公式サイトをご確認ください➡
ポイント
飲食店では、「若い人だけを採る」よりも、業務を分けて多様な人材に活躍してもらう方がうまくいく場合があります。
⑤キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)
「パートさんにもう少し長く働いてほしい」「でも年収の壁や社会保険の問題が気になる」
そんな飲食店に相性がよいのが、このコースです。
この制度は、短時間労働者の労働時間延長や賃上げ、社会保険加入などを後押しする助成金です。
支給額
・小規模企業(従業員30人以下):最大75万円
・中小企業:最大60万円
飲食店での活用例
・ランチ帯だけ働いていたパートさんに、仕込み時間も含めて勤務時間を延長する
・ベテランパートの勤務時間を増やし、新人教育も担当してもらう
・人手不足対策として、既存スタッフの戦力化を進める
主な要件
週の所定労働時間を2時間以上延長させることや、新たに社会保険へ加入させること等の要件があります。
詳細を知りたい方は厚生労働省公式サイトをご確認ください➡
助成金を申請する際の注意点
助成金では、順序を間違えてしまうだけで不支給になる場合があります。例えば、計画書を提出する前に取り組みを始めた場合や、交付決定前に設備投資を行った等です。助成金は事前準備が必要なケースが多いため、あらかじめ情報を頭に入れておく必要があります。また、提出書類について日頃から管理が出来ているかどうかも重要です。
例えば、
・雇用契約書や労働条件通知書を整備しているか
・雇用保険や社会保険の加入漏れがないか
・就業規則や賃金規程が整っているか
・勤怠管理が適切にできているか
・36協定など必要な協定が整っているか
など、日頃の労務管理が整っていてこそ進めやすい制度です。
そのため、「どの助成金が使えるか」だけでなく、「今の会社の状態で進められるか」も一緒に確認することが大切です。
まとめ
飲食店では、人手不足、採用難、定着率の低さ、人件費の上昇など、さまざまな悩みが起こりやすいです。
そのような中で、助成金は、採用・定着・賃上げ・両立支援を進めるうえで心強い制度になり得ます。
ただし、制度ごとに対象や要件は異なりますし、就業規則や勤怠管理などの整備が前提になることも少なくありません。制度ごとに対象や要件が異なり、就業規則や勤怠管理などの整備が前提になることも少なくありません。
そのため、自社で進めるのが不安な場合は、助成金に詳しい社会保険労務士に相談しながら進めるのも一つの方法です。
